「戦闘中一瞬息が止まったわよ！」

弱虫で泣き虫の彼は鬼との戦いの時はいつも置いてけぼりを食らいます。
「結美さま〜……？」
気がつくと家に誰もいないのです。
「ひどいや…、兇夜さんは連れて行って僕だけお留守番なんて」
しくしく泣きたい気持ちになりますが帰ってきた主人に赤い目を見つけられるとまた怒られます。
「………心配、かけたくないし…」
目を三角にしてまで怒る訳が分かっているのでここはぐっとガマンです。
しかし一人きりでは広すぎる屋敷。
式神たちもいないこの空間は、物音一つなくひっそりしていて余計に不安を煽ります。押さえ込んだはずのものがまたじわじわと競り上がってくるのが分かりました。
「う〜〜〜！ダメだダメだ！」
とっさに袖でごしごしこすって塩辛いものを撃退し、そのまま懐からあるものを取り出してぎゅうっと抱きしめました。
「……どうか無茶はしないで。無事に帰ってきてください……！」

それは主人の髪の毛を編み込んだ藁人形。彼にとっての大事なお守り。
手の中のそれに少し恨み事を言って、そして何度も何度も無事を祈る。
「…次はなにがなんでも付いて行きますからね」
最後に想いを込めてぎゅ〜〜っとして、またそれを大切そうに懐にしまい込みました。
「さて！きっとお腹空かせて帰ってきますよね、ご飯の準備しなくっちゃ！」
そして暖かい夕餉の香りが帰ってきた主人たちを迎えるのでした。

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ガラガラガラ
「ただ〜いま〜」
「お帰りなさいませ結美さま〜〜〜〜！！」
「ちょっと堅戯！あんたまた藁人形作ったでしょう！」
「え、えええ？つ、作ってないですよ〜…。あはは…」
「嘘つきなさい！さっき親玉との戦闘中にいきなり金縛りにあって一瞬息が止まったわよ！！」
「………………あ」
「やっぱり心当たりがあるんじゃない！もう作っちゃ駄目って言ったのに、今日はあんた夕飯抜き！」
「えええええ！？そんなあ！」
「そんなもこんなもない！約束守らなかった罰よ。次も留守番だからね」
「そんなのひどいです〜〜〜！！」
「あ〜もう！男のクセに泣くんじゃないわよ！」

そんな彼らの日常。

「……………夕餉冷めますよ」

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なんか小説もどきになりました；
最後ぽつりとツッコミ入れてるのが兇夜さんです。